酸素濃度計の活用目的・導入メリット

HACCP導入に伴い、包装工程にも管理基準を設定することで、危害発生を未然に防ぐ

食品包装に関係する法律は、食品衛生法、日本農林規格(JAS法)、日本工業規格(JIS)を始め多くあります。なかでも、食品関連の環境変化に対応するため、2018年公布の改正食品衛生法においては、HACCPが義務付けされることになりました。
 HACCPでは、製造環境と製造工程の側面から、「生物的」「化学的」「物理的」な3つの危害要因(ハザード)を管理することで、出荷する商品は常に安全性を確認・保証して製造することができる衛生管理手法です。従来の抜取検査による衛生検査に比べ、より効果的に問題のある製品の出荷を未然に防ぐことができるのと同時に、原因の追究を容易にすることができます。危害要因を運用管理する各工程においては、数値や官能的指標などによる管理基準を設定する必要があり、その設定根拠は妥当であるという客観的な根拠が証明できていることが必要です。
 食品包装の工程においては、流通段階では以下のような「生物的」「化学的」「物理的」な危害要因が考えられるため、それを防止し食品を保護する役割が包装技術に求められます。

危害要因 変質 変質を防止するための包装技術
生物的変質
(微生物・酵素・昆虫)
腐敗、膨張、風味劣化、変色、物性変化
カビ、虫害
ホットパック、包装後加熱殺菌包装(レトルト)、無菌包装
化学的変質
(酸素・温度・光線・化学反応)
風味劣化、褐変、退色、異臭(酸化臭・腐敗臭)、物性変化、栄養成分の減少、調味料の分離 真空包装、ガス置換包装(MAP)、脱酸素剤封入包装、脱酸素機能付包材、青果物鮮度保持包装(MA)
物理的変質
(物質の移行・散逸・衝撃・振動・加重)
物性変化(粘度・食感)、異臭、形状破壊 防湿包装、緩衝包装
真空包装 ガス置換包装 脱酸素剤封入包装  青果物鮮度保持包装
酸化防止、後殺菌の効率向上に有効です。内容物の鋭角的な突起によるピンホールが発生しやすいため包材には考慮が必要です。 酸化防止、微生物制御、肉の発色保持、粉体の固結防止などに有効です。

→ガス充填包装を詳しく知る
酸素を吸収する小袋状の脱酸素剤を、ガスバリア性の高い包材にて封入、密閉します。食品に直接触れない封入形態にすることが必要です。 青果物の鮮度を保持するため、包材にて最適な環境を整えます。内容物、流通条件などを考慮した機能性フィルムが活用されています。

水分や油分を含むもの、風味や香りがあるもの、酸化反応で有効成分が低減する性質のあるものなどは、商品が流通する間に、カビの増殖、変色・褐変、酸化臭、風味や香りの低減、有効成分の消失などで品質に大きな影響を与えてしまいます。そうした影響を阻止し、一定期間、一定品質を保持するために基準となる酸素濃度が、「管理基準」となります。

包装工程において、充填機、シール機、包装機などの設定値が正しいか、確実にガス充填がなされているかということを、ガス充填後の商品を酸素計で計測し、管理基準値を満たしていることを連続的に監視することができます。それにより、出荷時の商品管理や記録に役立てることができます。

また、脱酸素にあたっては、最適な状態で管理することも重要です。脱酸素が不十分だと品質の劣化や返品・ロスに、また脱酸素が過剰でも、不活性ガスや脱酸素材などのコスト増大につながってしまいます。

包装後の商品がきちんと脱酸素されていることをチェックすることで、商品の安全性を保証

酸素計で出荷前検査

ガス充填包装や脱酸素剤封入包装では、シール不良やガス置換装置の設定ミスなどにより、大気混入の可能性があります。そうした場合の発見が遅れることで、ロスの増大やクレームにつながってしまいます。
出荷前に抜き取り検査でのチェック体制により、管理基準を満たさない数値が出た場合は直ちにラインをストップし、早期に原因追及や対策を打つことができます。こうした検査体制が、安心な商品を出荷していることの証明にもなります。

酸素バリア性の高い容器への変更により、鮮度保持・賞味期限の延長・食品ロス削減を実現

プラスチック容器は、缶やビンと比べて、食品を劣化させる酸素を透過しやすい性質があります。その対策として、酸素バリア機能を持たせた容器により酸素の透過を低減することができ、その結果、賞味期限を延長させ食品ロスの削減につながります。近年、さまざまなバリア容器が多くの商品で活用されています。

酸素計活用事例-酸素吸収フィルム-

●酸素吸収機能フィルム:賞味期限の延長・できたて食感の保持
酸素吸収機能のある接着剤で複数のフィルムを貼り合わせた多層フィルムです。フィルム内の酸素を吸収し外部からの酸素の進入を防ぐとともに、水分の蒸散を抑制し内容物の水分を保持することができます。
また、脱酸素剤が不要になるため、廃棄物の削減にもつながります。

酸素計活用事例-酸素吸収ボトル

●酸素吸収ボトル:賞味期限の延長
酸素バリア層の間に酸素吸収層を挟み込んだ多層構造で、外部から透過してきたわずかな酸素も吸収します。酸素を排除することで、賞味期限を大幅に延長できる効果があります。

酸素計活用事例-酸素バリアフィルム

●酸化を抑制し、賞味期限を大幅に延長
外装フィルムに酸素バリア性の高い「アルミ蒸着フィルム」や「透明蒸着フィルム」などの包材により、酸化を抑制する効果があります。

酸素計活用事例-アルミ製ハイバリアトレー

●アルミ製ハイバリアトレー:賞味期限の延長
トレーを樹脂製からアルミ製に変えることで、酸素と光を遮断し、保存期間(賞味期限)を大幅に延長できる効果があります。

酸素計活用事例- 青果物の鮮度保持

●青果物の低酸素状態を保ち、鮮度保持期間の延長
フィルムに施されたミクロの穴により、内容物に合わせて最適な酸素透過量を設定でき、青果の呼吸を抑制する効果があります。
●結露による腐敗ロスを削減
適度な水蒸気透過性にすることで、結露による視認性低下やカビ・萎えを抑制する効果があります。

包装機・シール機などの稼動時にサンプルの酸素チェックをすることで、ムダなロスを防止

包装の接着不良などによる大気混入は、目視では確認することは難しく、発見が遅れることにより、ロスの増大やクレームにつながってしまいます。
包装機の稼動時や、包装後の商品の酸素チェックをすることで、ガス置換や包装が適切にできていることを確認することができます。トラブルを早期に発見できれば、ムダなロスを防ぎ、生産性を上げることができます。

酸素計の活用事例-包装機の稼働チェック

温度管理の設定間違えなどによるシールミス

酸素計の活用事例-包装機の稼働チェック

充填ガス圧など、設定間違えによる人為的ミス

酸素計の活用事例-包装機の稼働チェック

配管チューブからのガス漏れなど設備の老朽化

Case Study

食品別 残存酸素管理事例

弊社お客様の一事例を掲載しています。品質を保証する確実な基準ではないことをご了承のうえ、ご参照ください。ご検討の際は、実際の対象物や条件などに合わせて弊社よりご提案をさせていただきます。

コーヒー豆(N2ガス充填)

コーヒー

酸化により独特の香りが消失または焦げ臭くなる、酸味や苦さが増す、コクがなくなる、きめ細かな泡立ちがなくなるなどの影響があります。窒素ガス充填包装により、品質が保たれています。

<管理点>1%O2以下
<品質保持期限>1年
<焙煎後の発生ガス>二酸化炭素(炭酸ガス)や一酸化炭素(可燃性ガス)などを発生することがありますが、RO-105(ガルバニ電池式センサー)は、影響を受けずに測定が可能です。

レトルトごはん(N2ガス充填)

レトルトごはん

<残存酸素の弊害>水分と反応してカビが発生する。
<管理点>1%O2以下
<品質保持期限>6ヶ月

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切り餅(N2ガス充填)

切り餅

<残存酸素の弊害>水分と反応してカビが発生する。
<管理点>0.1%O2以下
<品質保持期限>6ヶ月

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ハム(N2充填)

ハム

<残存酸素の弊害>酸化によりピンク色から黄土色に変色する。
<管理点>0.2%O2以下
<品質保持期限>30日

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食物油(N2充填)

食物油

<残存酸素の弊害>焦げ臭い風味になる。薄い黄色から薄い茶色に変色する。揚げたときのサクサク感がなく苦みが出る。

<管理点>3~6%O2以下
<品質保持期限>1年

チーズ(N2充填/N2+CO2充填)

乳製品(チーズ)

<事例>静菌の目的で、N2+CO2混合ガスで置換包装。(N2ガスのみの場合も有)
<残存酸素の弊害>菌の増殖により、カビが発生する。

<管理点>0.5%O2以下、30%CO2以上
<品質保持期限>3~4ヶ月

和菓子(焼きまんじゅう)(N2充填)

和菓子(焼きまんじゅう)

<残存酸素の弊害>カビが発生する。酸化により風味がなくなる。
<管理点>1%O2以下
<品質保持期限>20日

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食品・飲料分野におすすめの製品

残存酸素/二酸化炭素計RO-105K/105/105L

RO-105製品ページへのリンク

■MAPガス対応、ガルバニ式酸素計。
■酸素センサー1年保証、
■減圧ガスの自動サンプリングを実現。
■詰まりチェックなど便利な機能を搭載。

食品用微量酸素分析計 型式:IS-300

食品用微量酸素分析計IS-300

長寿命のジルコニア式酸素センサーを採用した酸素分析計です。

Publishied Information

業界誌 掲載情報

食品・包装関連の出版物に掲載された弊社の記事、寄稿文をご覧いただけます。

「月刊食品工場長」2021年8月号

食品工場長8月号掲載内容へのリンク

特集
「食品ロス・廃棄物削減」

出版:日本食糧新聞社
http://info.nissyoku.co.jp/modules/kojocho/publish.php

「食品機械装置」2019年4月号 技術資料

食品機械装置2019年4月号技術資料ダウンロード

「食品包装の多様化・厳格化における先進”酸素濃度計”の役割と技術」

出版:ビジネスセンター社
※本文では従来モデル「RO-103S」を紹介しています。

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