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測定事例
生活排水や産業排水を処理する排水処理施設はさまざまありますが、なかでも私たちの生活に身近な合併処理浄化槽。家庭用の小型合併浄化槽からマンションやオフィスビル、商業施設で使われる大型合併処理浄化槽と、規模や処理方式もさまざまです。基本的に浄化槽は微生物によって排水を処理するため、微生物の機能を維持し、浄化槽の各設備機器が正常に作動するように、定期的な維持管理(保守点検、清掃、検査)を行います。維持管理の役割は、浄化槽の機能を適正に保ち、浄化槽法で定められた放流水質の基準を満たすことです。
浄化槽の保守点検では、いくつもの項目で点検され、そのうちの重要な項目の一つが水質の点検で、透視度、DO(溶存酸素)、pH、残留塩素などの測定を行い、浄化槽の機能がきちんと働いていることを確認します。
■活性汚泥処理(→測定用語辞典「活性汚泥処理法」へのリンク)
汚水の処理方式は様々ありますが、活性汚泥処理法では、餌である汚濁物質(有機物)を微生物に食べさせ増殖させ、集団(フロック)を作る汚泥の沈殿作用を用いて、上澄み液と沈降した汚泥を分離させ、分離水(処理水)を放流する仕組みです。
接触ばっ気方式と比べて、流入負荷量に対する空気量やMLSS濃度を調整することにより、有機物の除去率を高く維持することができます。
■DO(溶存酸素)の管理
合併浄化槽では1.0mg/L以上のDOが必要です。また、DOと水温は密接に関連しているため、水温も同時に測定する必要があります。
DO計で接触ばっ気室内および接触材内の各部位(少なくとも3か所以上)のDO分布を測定し、死水域が生じていないことを確認します。部位による差が2mg/L以上あると十分にかくはんされていないことが多く、大きな差があ認められる場合は逆洗浄時期と判断します。
■pHの管理
処理過程において汚泥の嫌気性分解、硝化の推進等により変化するため、処理の進行状況の把握には重要な項目です。処理工程ごとにpHを測定し、その変化を調べます。
<流入水>
pHが低下している場合は塩素系洗剤などの薬品の混入、pHが上昇している場合はアルカリ性洗剤などの薬品の混入が原因と考えられます。
<1次処理装置>
pHが低下している場合は汚泥の嫌気性硝化(有機酸、炭酸の生成)、pHが上昇している場合は汚泥の可溶化(アンモニアの生成)が原因と考えられます。
<2次処理装置>pH6.5~7.5が最適
pHが低下している場合は硝化反応の進行(硝酸の生成)、pHが上昇している場合はばっ気によるCO2の飛散が原因と考えられます。
<沈殿槽>
pHの上昇が見られる場合は、脱窒反応(硝酸からN2への変化)が原因と考えられ、pHが低い方が消毒効果が高くなります。
■MLSS濃度の管理 →測定用語辞典「MLSS」ページへのリンク
ばっ気槽で微生物を増殖させる際に必要な管理指標がMLSS(活性汚泥浮遊物質)の濃度です。ばっ気槽では、能力を十分発揮させるためにMLSS濃度を適切に保つ必要があり、そのために返送汚泥量を調整したり余剰汚泥を引き抜いたりします。このとき、MLSSを測定することによって、最適な管理ができます。
例えば、汚泥の引き抜き過ぎなどでMLSS濃度が低くなると、微生物がフロックを作らず沈殿せず処理水が得られなくなったり(膨化)、発泡が増加したりと、微生物の減少により過負荷の状態になっており、処理能力が低下します。MLSS濃度が高いほど、汚泥の膨化や発泡も減少し、一時的な過負荷や有害物質の流入による障害に対して回復が早くなります。
しかしMLSS濃度が高すぎると、微生物の量に対して空気が不足したり、沈殿槽では沈殿効果が悪くなる等の障害が生じます。またブロアの電気代や同化作用による余剰汚泥の廃棄コストが上昇します。MLSS濃度を適正に保つために、MLSS計で日々監視することが重要であり、排水の最適管理につながります。
合併浄化槽の場合、時間最大汚染水水量が建築物の用途などにより大きく異なり、スカムや汚泥堆積量は室内の流速によって支配されることが多いため、少なくとも流入部、中央部、流出部の3か所を測定し汚水の流入速度を推測します。
(1)「施設の運転管理ができておらず時期ごとの排水の負荷変動に伴う水質不安定や運転トラブルに不安がある。薬剤投入のため休日も出社している。」
(2)「ブロア運転だけで1日6,000円かかっている電気代を低減したい。」
(3)「処理水が、放流基準値をオーバーしてしまう。」
(4)「施設管理を薬剤に頼っているため、種々の薬剤コストがかさんでいる。」
(5)「排出汚泥が増え、汚泥処理費が増加している。」
(1) 「排水の負荷変動や水質変動に対応、予測もできるようになり、休日出勤することも不安もなくなりました」
(2) 「DO値の最適管理によりブロア運転をコントロールでき、年間を通して電気代を10%削減できました」
(3) 「処理水は放流基準値を確実にクリアしています」
(4) 「施設のコントロールにより無駄な薬剤を使わなくなり、薬剤コストが年間340万円から160万円に削減できました」
(5) 「余剰汚泥が減ったため最終的な脱水汚泥ケーキも減量でき、年間3000万円かかっていた汚泥処理費用が、1600万円にまで削減できました」
<DO計の活用ポイント>
ばっ気槽では、ブロア(送風気)からの空気で微生物が呼吸をし、有機物を分解しています。DOを管理することで、微生物の過剰増殖による汚泥の増加を防ぎます。また、ブロアの電気代を必要最小限にすることができます。
<MLSS計の活用ポイント>
ばっ気槽では、沈殿槽からの一部返送される汚泥を循環使用して活性汚泥(MLSS)濃度を維持しています。
MLSS濃度を測ることで、日々変化する排水への適正な汚泥返送率をコントロールできます。適切な運転により、電気代と最終汚泥量を削減できます。
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